『あすなろ通信』2013年5月第170号

発行
高松あすなろの会
主な記事

「奨学金」という名の「借金」

「奨学金」というと、字のイメージなどから、成績優秀な学生が学業を奨励されて給付されるお金で返済の必要はなく、サラ金などの借金とは全く違うものではないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。

日本では、そうした給付型の奨学金も公益社団法人などが行って一部には存在していますが、選考基準が厳しく募集人員も極めて少ないことなどから限られた人しか利用できていません。

現在日本全国で広く利用されている「国レベル」の公的奨学金は、日本学生支援機構(旧日本育英会)が一手に担っていますが、日本学生支援機構の奨学金は給付型ではなく貸与型(貸付)で、卒業して半年後から返済をしていかなければなりません。しかも、1998年までの貸与型は無利子が中心だったのですが、1999年に支給額を大幅に引き上げた有利子貸与型(第二種奨学金)が導入されてからは、選考基準が無利子型(第一種奨学金)よりも緩和されて申請すればその多くが認められ、さらに大学などの授業料の値上がりや長引く不況などもあって、日本学生支援機構の有利子貸与型の奨学金を利用する学生はどんどん増えていき、現在では2.7人に1人(37%)の大学生が利用していると言われています。全学生の半数以上(50%〜60%超)が利用している大学も多数あります。

2013年3月31日、東京で「奨学金問題対策全国会議」の設立集会がありました。そこで聴かれたことは、「非正規労働による収入の低さや失業等で生活が厳しく奨学金の返済ができない」や、「奨学金元本と利子合わせて800万円を20年かけて払っていかなければならない。生活するのに精一杯で結婚や出産なんかはとても考えられない」、中には「自分の知らないところで両親が借金返済のため自分名義の奨学金を借り入れていたようで、突然裁判所から支払督促が届いた」や「卒業後、正社員として就職できたが、うつ病になり2年で退社した。750万円残る奨学金の返済は困難。弁護士に相談したところ自己破産を勧められているが、家族と親族が連帯保証人になっているので、自宅を売却しなければならない」などで、いま20代〜30代の若者に大変な事態が起こっていることに衝撃を受けました。彼らが背負わされた重い足かせは、これからの日本にとっての足かせになっていくのかもしれません。

日本学生支援機構のホームページにある「奨学金貸与・返済シミュレーション」を使って試算をしてみました。

4年制大学に通うとして月額8万円を借り、入学時特別増額も20万円借りたとすると、借入総額は404万円になります。貸与中及び返還期限猶予中は無利息ですが、貸与終了後支払いが始まると利息がかかってきます。貸与利率は上限の年利3%(入学時特別増額利率は3.2%)で計算され、毎月2万2673円の支払いを240回(20年)払い、返済総額は544万1745円となります。年利3%とはいえ、借入元金より140万円以上も多く支払わなければなりません。

実際の適用利率は3%を下回る可能性がありますので(※本年度は1%未満)、返済総額はもう少し少なくなるかもしれませんが、気を付けなければならないのは支払いが遅れたときに発生する延滞利率です。第二種奨学金の場合、支払が1日でも遅れると、支払約定日の翌日から延滞利率は10%になります。また、無利息のはずの第一種奨学金も、返済期日6か月を過ぎると、5%または10%(2005年4月以降に採用された人は10%、それ以前は5%)の延滞利率が課せられていきます。支払い困難になり1〜2年放置していると、数十万円も延滞金が増えてしまいます。

上記の試算の例ですと、延滞金は月3万3666円になりますので、1〜2年延滞後に支払いを再開して毎月2万2673円を払ったとしても、民法の充当の順位からその金額はすべて延滞金に充てられ、残念ながら元金は1円も減らずに、逆に延滞金が毎月1万円以上さらに増えていってしまいます。毎月かなりまとまった金額を支払って、延滞金が0円になってからでないと元金は減っていかないのです。

また、日本学生支援機構のホームページによると、延滞した場合、文書と同時に電話でも督促を行っており、その電話は機構職員の他に業務委託をした債権回収会社からも行い、さらに本人の勤務先に電話する場合があると明記されています。

サラ金などの貸金業者は、貸金業法で特段の事情がない限り本人の勤務先への取立電話は禁止されています。ところが、日本学生支援機構は貸金業法の適用外で、勤務先への督促電話を禁止している法律はありません。しかし、法律がないからといって何をしてもいいというわけではありません。ドイツでは自宅、勤務先を問わず、取立の電話は「テレフォン・テロ」の一種で悪質行為とされています。電話で取立を受けるのは本当に辛いものです。精神的に追い詰められます。ましてやそれが勤務先では、周囲の目などから適正な対応などできるはずがありません。取立する側もそれを承知の上で勤務先に電話をしているはずです。こういったことが実際に行われているのであれば、奨学金の取立行為はサラ金よりも酷いと言わざるを得ません。即刻中止していただきたいものです。

「卒業と同時に数百万円の借金を背負わされ、それを20年かけて返済していく」…安定した収入が見込めるところに就職できた人はまだしも、大学を出ても正社員にはなかなかなれず、パート・アルバイト・派遣・契約などの非正規労働を続けるしかない人たちは未来に希望を持てるでしょうか。

日本の奨学金制度は、まず、その名称に問題があると思います。欧米では「奨学金」とは給付型をいい、日本のような貸与型は「学生ローン」と呼ばれるそうです。無利子であっても返済しなければならないものは「借金」です。「借金とはサラ金などのようなもので、貸与型奨学金は借金ではない」と思い込んでいる人も少なからずいるかもしれません。貸与型を「奨学金」と呼称することについて一考する必要性を感じます。

次に、日本は給付型奨学金の少なさが問題です。前述のとおり、日本学生支援機構は貸与型のみです。公益財団法人などの給付型奨学金の募集人数は、それぞれ数十名程度ですので、多くの学生はその恩恵には恵まれないでしょう。

欧米の奨学金先進国では、給付制奨学金を受給する学生の割合は50%〜70%超となっています。(オランダ72%、スウェーデン69%、アメリカ65%、イギリス62%、ノルウェー56%、フィンランド55%など)

さらに、日本の大学は学費が有料で、しかも景気や物価とは全く関係なく年々上がり続け、世界の流れに逆らった高額化になっていることも問題です。

日本の大学の、平均学費の変遷は次のとおりです。1969年入学者の初年度納付金は、国立1万6000円・私立22万1874円だったのですが、1979年/国立22万4000円・私立64万8637円、1989年/国立52万5000円・私立103万5116円、1999年/75万3800円・私立127万3095円、2010年/国立81万7800円・私立文系120万円・私立理系150万円となっています。

そもそも欧米諸国の多くは「教育の効果は個人に帰属するものではなく、国家・社会に還元されていく」との考えから、教育費は大学を含めて全額無償か、かなり低額です。有料の国も給付制奨学金制度が充実していますので、学費の家計に対する負担はほとんどかからないのが現状です。

先日5月5日の新聞に「文部科学省は4日、所管する日本学生支援機構が大学生らに貸与している奨学金について、返済が滞った場合に加算している延滞金を現在の年利10%から引き下げる方針を固めた。返済に苦しむ低所得者層に配慮する試みで、早ければ来年度に5%程度とする方向で調整している」と報道されました。

先述の3月31日の東京での「奨学金問題対策全国会議」の設立集会は、新聞やテレビで取り上げられて報道されました。それに呼応したかのような文科省の素早い対応に、この運動の必要性を感じます。

現在の日本の教育制度では、「富裕層」以外の人たちが大学などの高等教育を受けようとすれば、「貸与型の奨学金を受ける」しかなく、それはすなわち=「多額の借金を抱える」ことになるのです。

奨学金問題は、受けている当事者だけの問題ではありません。日本の将来に関わるこの国に住む人たち全員の問題です。欧米諸国の精神を見習って、この日本で早く奨学金の給付制拡充と教育の完全無償化が実現できるように、私たちも運動に参加し続けていきたいと思います。

高松あすなろの会 財政危機突破カンパのお願い

1983年12月23日、わずか13名の涙の中から生まれた「クレジット・サラ金被害者の会=高松あすなろの会」は、30周年を迎えることになりました。

発足当時、サラ金は現代のヤミ金のような取立てをしており、「サラ金地獄」という言葉が生まれ社会問題になっていました。その後、クレジット問題や商工ローン問題、ヤミ金問題など、新しい問題が次々と増え、近年はクレ・サラ・ヤミ金問題の背景にある貧困を根絶する運動にも取り組んでいます。

長年の運動により、私たちは改正貸金業法を勝ち取りました。その結果、サラ金業者は激減しました。香川県知事登録の貸金業者は、最盛期の1985年には264件あったのですが、2013年5月現在の登録は6件になっており、全国展開の大手サラ金業者の香川県内支店もそのほとんどが無人化され有人店舗は激減しています。

貸金業者数が減れば、それだけ被害数も減ってきます。私たちの相談現場は、いま大きく様変わりしています。2003年頃のヤミ金被害がピークのころは、事務所はいつも相談者が絶え間なく訪れ、電話も頻繁にかかっていましたが、今はそれらが激減しています。しかし、クレ・サラ・ヤミ金被害が根絶したわけではなく、貧困根絶のさらなる活動も私たちに求められています。

しかし現在、高松あすなろの会は、財政危機で今後の存続が困難な状態です。このままでは困っている人を置き去りにして、泣く泣く閉会せざるを得ないかもかもしれません。

役員会でもあらゆる方策を講じて、この危機を乗り越えていきます。財政状況を少しでも改善してこれからも活動が続けられるように、金額の多寡にかかわらず可能な範囲で皆様のカンパ等のご協力をぜひよろしくお願いいたします。

前回のお願いでは、たくさんの皆様よりこころ温まるご支援を戴きました。ほんとうにありがとうございました。

多重債務・生活再建の勉強会

調停・過払い金返還勉強会に加えて、破産手続きの勉強会など多重債務全般のほか、生活するうえでの困りごと「なんでも勉強会」です。

会員の方は、どなたでも参加できます。足が遠のいている方もどうぞお気軽にご参加ください。

  • 毎週月曜日(月曜休日の場合は翌火曜日)午後7時00分〜午後9時00分

「継続は力なり!」毎週かかさず参加しましょう。

コメントを残す