クレジット・サラ金・ヤミ金や生活に困ったら高松あすなろの会 - 『あすなろ通信』2016年11月第186号 -

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『あすなろ通信』2016年11月第186号

発行
高松あすなろの会
主な記事

『せめて差押禁止額を超える差押はしないでください』

改正貸金業法10年を迎え、クレジットやサラ金や銀行からの多重債務相談は減ってきましたが、それに代わって税金や国民健康保険料(税)や公営住宅の家賃滞納や公共料金の滞納で困っているとの相談が増えています。

役所へ同行して分納の相談などをしていますが、最近差押禁止額を超える差押が存在していることを知り驚いています。

給料や年金の差押禁止額の計算は以下の通りです。

A
=給料や年金から天引きされる税金・社会保険料
B (最低生活費相当額)
=10万+4.5万×家族人数×必要なら日割り
C (生活費の加算額)
=(総支給額-A-B)×0.2
A+B+C
=差押禁止額

ところが、滞納者の承諾があれば、法律の上限を超えて差押ができるのが、国税徴収法76条5項です。実際に年金支給額が差押禁止額も満たないにもかかわらず、滞納者の「承諾」により差し押さえられたケースもあります。

本人は差押禁止額など何も知らされず、差押を承諾したようです。もちろん、承諾は任意のものですから、承諾を本人が取り消す旨を伝えれば差押は解消できますが、払えないのに承諾書にサインするのはやめましょう。

せめて、差押禁止額を超える差押はしないでください。

国の滞納整理に当たっての基本方針は
  1. 滞納者の実情は納付能力調査を中心に把握したうえで
  2. 法令に基づいて滞納処分か納税緩和措置を決める
となっています。

納税に対して誠意ある滞納者として対応しましょう。お困りの方はご連絡ください。

なお、12月20日には全国一斉に「税金・国保料 滞納、差押ホットライン」が予定され私たちも参加する予定です。

体験談『家族の思い』

三回目の窃盗

早朝から電話がなる。あまり早い電話は嫌な予感がする。育ててくれた義父からの電話だ。「あにきがまた警察に連れて行かれる。馬鹿なことをまたしてしもうた。お前に迷惑かけて申し訳ない」と気弱な声で話した。

急いで駆けつけると自宅前には数人の警察官。家の中は早朝からの家宅捜索で義兄の部屋が数人の警察官により片端から捜査されている。手錠をかけられた義兄が連れて行かれる。

動転したわたしの前を通る時、小さな声で「ごめん」と言った。

平成24年10月及び平成25年6月二回にわたり民家の物干し場の女性用下着を数点窃取した事件である。そして二回目の時は敷地内に侵入したとの事件である。この光景は3度目である。何度遭遇しても胸が押しつぶされるくらい辛くなる嫌な気持ち。夢であってほしいような祈る気持ちになる。

どこまで義父を心配させ困らせ苦しませるのか。この事件を繰り返すたび、私たち家族はどんなに肩身の狭い思いで世間から噂され陰口を言われ泣いてきたんだろう。何回怒っても何回注意しても義兄のアルコールと夜間外出は治らない。

ある時は、突き飛ばし暴力をふるってしまうほど私の気持ちはおさまらなかった。何回注意してもわかってくれない義兄の背中や頬を思い切り叩いた。

壊れていく、小さい頃から一緒に育ってそれなりの絆もあったはずの私たちの心が、ガラスが粉々に割れるように元には戻らない。2度と義兄に私の気持ちは通じない。

一生懸命に働いて貰ったお給料を一晩で使ってしまう。ツケで飲んだアルコールの支払いで全額消えていく。この生活が数年続き、義兄の行動はますます悪化し何度も同じ過ちを繰り返してしまう。

義兄の中にもう一人の違う人格が住み着いてこんな犯罪を繰り返すのだろうか? 何か取り憑いて祟られているのだろうか? 情けなく早く死んでくれた方が皆に迷惑かけなくていいと本気で思ってしまう私がいる。

知的障害

子供の頃から多動で勉強の嫌いな彼は特別支援の学級にいた。休み時間になると校庭に走り出しブランコに乗り遊んでいる。先生が教室に入るように促すもやっと僕の番が来たとブランコから降りてこなかったそうである。

学習障がいと思っていたのだがある知人の言葉で彼が本当は知的障がいがある可能性があり療育手帳も交付してもらわず55年を過ごしている現状があることに気づきました。知らなかった、そのような制度があるとは。

義兄を知的障がいがあるかどうか知能検査して欲しいとお願いするも却下される。既に逮捕され拘束されている現在では無理なお願いで聞き入れてもらえないということがわかった。

私は知的障がいがあるかもしれない人に暴力を振るったとても罪深い人間だ。過去に言った彼を軽蔑する言葉、蔑む言葉、本当は言ってはいけない人に強い口調でなじった自分はこれまた罪深い。

今から冬を迎える拘置所はどんなに寒くて冷たいだろう。着替えを持っていく私を受付の女性担当者はいつも優しく対応してくれた。

どの人に言えば義兄のことが伝わるのだろう。テレビドラマの刑事のようにこの思いを聞いてくださる方は皆無だった。それは、仕方が無いこと。義兄が悪いことだから。

国選弁護人の方に相談するも、彼も警察や検察の味方のような口調で、前回の弁護士さんと同じく、再犯だし実刑確実だと言った。

ただ、「こういうのを繰り返すのをクレプトマニアというんですよ、義兄さんがそうと決まったわけではないですけどね」と彼は言った。 なにクレプトマニアとは? わらにもすがる気持ちで検索すると赤城高原ホスピタル・竹村医師のホームページをネットで知った。

赤城高原ホスピタルへ

弁護士さんに保釈申請をお願いする。保釈金は丁度200万円でした。

児童相談所で義兄の知能検査など専門的検査を行った。6歳の児童のIQしかなく難しい問題は解けず中等度知的障がいと判断された。涙がでた。これを知らなかったなんて、義兄の今までの辛さや悲しさをわかってあげることができなかったなんて。

これは家族にも責任があると思った。義兄の小さい頃の顔や色んなことが走馬灯のごとく頭の中に流れてきた。治療を受けなければ、病気であるなら治さないといけない。

すぐに私は赤城高原ホスピタルへ電話をした。国選弁護人にお願いし診察のため群馬に行かせて欲しいと頼む。

「本当に群馬に行くのですか?」国選弁護人は、びっくりしたような顔で私を見た。それが義父に対しての恩返しになるだろうと思った。それが義兄に対してのせめてもの罪滅ぼしと思った。

1月15日が初診で、病名はクレプトマニア、アルコール依存症、フェチシズムであった。竹村先生に診てもらい、義兄と竹村先生が2人きりで話した後、「わしの気持ちはじめて分かってくれる人おった」と義兄は泣いていた。1月23日赤城高原ホスピタルに入院し治療をはじめる。

公判では知的障がいがあること、クレプトマニアの入院治療を行うことなど竹村先生の意見書が提出された。この意見書も時間のない中、竹村先生が寝る間を惜しんで書いて下さった。

本当にこの先生に出会えたことに深く感謝します。もし、赤城高原ホスピタルを知らなければ、竹村先生に会えなければ、どうなっていたでしょう。

執行猶予付き

4月になり、検察官と裁判官が新しい担当の方に変わる。

赤城高原ホスピタルでは、真面目に生活し治療をうけました。とうとう新しい裁判官での判決の日。

覚悟はしていた。このまま荷物も持たずに塀の中の人となるだろう。何もしないのではなかった、やるだけの努力はした。できる限りの治療を受けて反省もした。だから、実刑が出てもそれを受け入れ、今後も必要なら入院させてもらおう。

判決は懲役1年6ヶ月、執行猶予4年と確定された。なんということ。信じられない。実刑にならなかった。判決をとてもありがたく思った。竹村先生の顔が浮かんだ。そして、情状酌量してくれた裁判官のお心を深く受け止め再犯なきよう人生を送れるよう見守らねばと強く誓った。

今は義父と義兄を引き取り同じ家で暮らしています。

どん底でどうにもならない時に、高松あすなろ会をはじめクレプトマニアの家族会でお会いした皆さん、赤城高原ホスピタルの竹村先生やスタッフの方々、そしてクレプトマニアの患者さまで義兄に関わって下さった全ての皆様、国選弁護人の方、裁判官の方、全てを知った上で雇用してくださると言った知人の経営者の方、皆様のおかげで助けていただき感謝いたします。

そして、何より義兄を家に呼んで一緒に見てあげようと言ってくれた私の夫に感謝します。

義兄と一緒に

義兄はいつもひとりぼっちでさみしい顔をしていました。今はどこへ行くのも殆ど一緒で、夜間外出も一度もしておりません。

そしてアルコールも一滴も飲まなくなりました。家族は諦めないことが大事と思います。家族が諦めるとクレプトマニアの治療は出来ないと思います。そして、また気を引き締めて義兄の生活をサポートしていきます。

決して忘れてはならないのはもう二度と繰り返さないこと。時々、思い出し初心に戻り反省し同じ過ちを起こさないことがこれからも私たち家族に与えられた課題である。

義兄は、竹村先生と約束して書いた誓約書を今でも大事にポケットに入れている。

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